明日のぼくへ

 

明日には大人になる君へ

明日には大人になる君へ

  • amazarashi
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明日には二十歳になるぼく。何もなしえなかった十代を弔う気持ちは、実は多少持ち合わせていたり。というよりも寧ろ、何もなしえなかったからこそ弔うのかもしれない。

二十年なんて、途方もない数字に見える。その途方もなさの中をぼくは確かに生きていて、確かに楽しんで、確かに傷ついた。特にこの十年は、本当に。

NHK合唱コンクールでは銅賞止まりだったし、ダンスのオーディションは慈悲で合格だったし、バンドはなくなるし、祖父はなくなるし、部長は辛かった。ライブで最後の曲が印象に残るように、十代最後は目一杯の苦痛があったから、ぼくは何かを成し遂げることなく、辛い思いだけを抱えてきたように思える。勿論、そんなものは錯覚に過ぎないのだけれど。

ぼくはここ十年で、喪失を覚えた。無駄とは言わないけれど、どうしてこんなにも必要のない感情を増やして、それに費やした年月が過ぎることがひどく悲しいのだろう。この胸の突っかかりは何だろう。無為じゃないことが無為に思えた十年。喪失に無感覚だった十年の喪失感が、痛みを覚えるほどに、依然と植え付けられている。

本当に、これを弔いと以外になんと形容すれば良いのかわからない。過ぎ去った時を棺桶に詰めて、たくさんの花を添えて、どこかへ送り出したい。さようならを、言ってあげたい。

戻りたいとは思わない。どちらかというと、忘れてしまいたい。

でも、やっぱりぼくは生きていた。その最低最悪な時を生き抜いて、こうして誰に見られることのない文字を綴っている。生きていた。間違いなく、ぼくは生きていたのだ。生きていたことは、やっぱり忘れたくない。どれだけ辛酸をなめていたとしても、ぼくは今、その事実に蹴りを入れて生きている。

ぼくは弔う。くそったれな事実を作り上げられ、それでも生き抜いてきたぼくの十年を弔う。這い上がった足跡を弔う。付けられなかった爪痕を弔う。

十年だ。十歳から二十歳。その送り出した十年が時折、ぼくを見に来るだろう。成すべきことはなんだ。やるべきことはなんだ。ぼくがぼくを見ている。

何も変わらないかもしれない。死ぬかもしれない。それでも、だ。頑張るんだ。

十年のいのちへ、十年後から愛をこめて。

「真実は、おまえは弱き者。そして、おれは心悪しき残虐者だ。だが、俺は努力するぞ。羊飼いになれるように、全力で努力する」

───「パルプ・フィクション」より抜粋