呪いへの手向:MV制作

「目的は手段を正当化する」は本来、国家が危機に対面した時、君主は手段を選んではならないという意味らしい。曲解が流布しているのは、やはり人々にはなんでも自分の都合よく受け取る節があるらしい。マキャベリストって、自覚を持っていたりするのだろうか。ないだろうな、絶対。

昨日、ぼくのいたバンドのボーカルが"また"変わった話を軽くしたと思う。そう、また。言った通り、新しいボーカルのあの子は親と色々あったらしく、メンタル面的に駄目だったとか。

自身の良い立場を手放すまで、心が壊れるような子ではなかった。歌もギターもゲームも上手くて、故に前向きな自信に溢れている。そんな子が、メンタル面でバンドを抜けるなんて考えられない。

ぼくはそれを聞いた時、多分あれは怒りの感情だったと思うんだけれど、そこに自身を多少照らし合わせた。ぼくがそれなりに病んで、すっかりやる気を削がれてもなんの話をしなかったどころか、「話し合い」という名の吊し上げを喰らい、それなりの練習を重ね、カバーする楽曲を仕上げても演る前にクビ。ぼくは話がしたかったけれど、メンタルがぼろぼろの状態では何も言えなかったし、結局、感情に任せて思いの淵を履いたのは最後の最後だった。

彼らは助けない。だって、ドラムの彼とギターの彼が二人で音楽をしたいだけだから。

ぼくはこれをぼく自身の恨みから生まれた妄想だと信じ込んでいたけれど、彼の一件はあまりにも早計で、待ってやる選択もしなかったのを思うと、それが事実だと思う。元ボーカルの彼、ぼくより彼らと付き合いが長いのに、簡単に切り捨てるんだし。

彼らは二人だけの世界に生きている。ぼくに関することも、キーボードの彼に何の相談もなかったみたいだし、曲作りも二人。あのバンドは二人だけのもの。そぐわないやつ、障害になるやつは排除。二人に対してのイエスマンを募集。二人で夢をつかめれば良し。

音楽をやる資格どうこうを問うつもりはない。しかし、あの日言われた言葉をそっくりそのまま返す。

「そんな奴の音楽が心に響くと思ってんの?」

ぼくは彼らのカバー曲MVに、演者として出る。担任の先生の頼みだから。ただ、これきりだ。ぼくは彼らと違う世界に生きることを、はっきりと見せつけてやる。それでぼくは、しがらみを完全に断ち切る。

くたばりやがれ。ぼくの最後の手向けの言葉だ。

未来になれなかったあの夜に

未来になれなかったあの夜に

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