思考の肥やし

あまり話したことのなかった彼の話は、かなり面白かった。ぼくが女子と上手く話せない話をすると、曰く「人たらし」になれと。経験は何よりも饒舌であるが、まったく彼の繰り広げる言葉には、圧倒とカリスマ性を覚えた。共感とか分析とか、本当に上手く他人と付き合える人間なんだろう。羨ましくもあるし、彼とは仲良くなりたいもの。そんな彼、PSYCHO-PASSが好きらしく、四周も物語を巡っては台詞なんかを暗記していて、関する知識は膨大だった。

「ありえない自体が起こったなら疑うべきは2つだ。 前提条件が間違っているか、それともあんたの脳がいかれちまったか」

この台詞が彼にとって大切らしい。創作物からメッセージを受け取り自身の人生に活かすことは、常に彼が思考して生きている証拠だ。様々な意味で彼は「賢い」のだと思う。

ぼくにはこんな座右の銘らしいものはない。一つの言葉を主軸にするより、その場その場で都合の良い免罪符的な言葉を、無駄な物ばかり詰め込んだ頭から引き出している。狡い人間だと自嘲を禁じ得ないが、もはやこれは癖らしいもので。

とにかくこんなにも思慮を重ねて、それをまったく分かり易く言語化する同年代の人間には、ぼくは初めて出会った気がする。お陰でぼくも多少なりとも成長できた気がするし、価値観や思考をダイレクトに伝えるやり方も教わることができた。

徐々に人脈が広がって、それに比例して、本当の意味で「ぼく」が豊かになっている。これからもそんな人々との関係を望みたい。