振り向くな、アムロ

スーパーロボット大戦30、未だにクリアしていない。なんといってもサイドミッションが豊富で、キーミッションに辿り着くまでの力がごっそりと削り取られる。終盤に差し掛かってはいるのだが、DLCの参戦ミッション以外にあまり手をつけていないから、そちらもこなさねばならない。

ぼくは物心ついた時からずっと、ガンダムシリーズが心を構成するリソースになっていた。リアル路線やSFといった、現実とせめぎ合う創作物を好むのは全部こいつのせいで、刷り込まれた嗜好はなかなか変えようがない。とにかくぼくは今日に至るまで、ありったけの「リアルもの」を摂取した。

勿論、趣味以外を一切拒絶するわけでもない。ファンタジーもそれなりには見てきたと思うし、リアルからは少しばかり離れたロボットものもいくらか見た。確かに趣味に合わないものがそこそこ経験に蓄積されることになったけれど、それが悪いとは思わないし、合わないだけで面白いのは面白い。

だからスパロボシリーズに特段アレルギーを起こしたわけでもなく、むしろ、クロスオーバーはぼくたちオタクの心をくすぐる代物だから、常に目を輝かせてプレイしている。

ただ、ひとつだけ気に入らない部分がある。物語のほとんどがテキストで進行する特性上、仕方のないことではあるが、キャラクターがそのシーンに至るまでの物語の経緯や自身の心情をぺらぺらと喋り立てるのだ。これだけだ。これだけがどうしても気に入らない。気に入らないどころか、大嫌いだ。小説において、その物語を紡ぐ第三者の語り手、もしくは主人公が語る言葉群を、登場人物が口にすることは、多分、一番やってはいけないことだと思う。それはゲーム、特にストーリー重視のものにだって言えることではないだろうか。

「俺は一年戦争後幽閉されたが〜...このRX-78のレプリカで〜...しかし、戦い抜いてみせる!」

言うはずがないだろう、俺のアムロがそんなことを。たとえ心情の書き起こしだとしても。振り向くな、アムロ。ちなみに、自分はガンダムの型式をRX-78-2だと思っている派だから、そこにも微妙に違和感を覚えたのだけれど、そうなると単純すぎるオタク談義なのでTwitterでやれという話。割愛。

とにかく、言うはずがないのだ。ましてやガンダムシリーズはリアルロボットものの金字塔で、会話なんて富野節が炸裂して、時折数回の台詞のやり取りが考察の的になる。

ここで良い例えを思い付いたから聞いてほしい。とは言っても、ガンダムオタクにしかわからないものだが。

ガンダムUCのバナージのセリフを思い出して欲しい。「やりました!やったんですよ!必死に!その結果がこれなんですよ!モビルスーツに乗って、殺し合いをして、今はこうして砂漠を歩いている。これ以上何をどうしろって言うんです?何と戦えって言うんですか!」砂ばしゃり、と。この程度なら自然だ。もはや完璧に近い。これだけなら会話をする登場人物の内だけの話になるし。少し誇張するかもしれないが、例えばスパロボガンダムUCの参戦がこのシーンからだとしよう。「やりました!やったんですよ!必死に!その結果がこれなんですよ!インダストリアル7で父さんにユニコーンガンダムを託されて、ユニコーンを狙うネオ・ジオンと殺し合いをして、戦闘の最中に地球に落ちて、今はこうしてあなたたちに救われて砂漠を歩いている。これ以上何をどうしろって言うんです?何と戦えって言うんですか!」言うはずがないだろう、俺のバナージがそんなことを。振り向くな、バナージ。

やはりリアルの嗜好を選択すると、こんな具合でゲームのテキストにすら嫌気がさす。面倒な人間に育ってしまったけれど、それでもアムロもバナージも逐一状況を口に出したり、言語によってあまりにもはっきりと思考はしないと思う。

そういえばガンダム無双3のオリジナルストーリーも、テキスト上でのやり取りが多かったな、と。記憶が曖昧だからあまり強く言えたものではないけど、最初の「俺は○○をしていたはずだが...!?」のような台詞以外、全てプレイヤーが各登場人物にのし掛かる物語を理解している前提でストーリー進行が行われていた気がする。あれでいい。わかっている前提でスパロボも突き進んでもらえれば良い。用語だって四角ボタンで選択すれば説明してくれるんだし、オリジナルストーリーはいつも通りの会話劇で大満足だ。

しかし、製作者の方々が「各々の説明も必要だろう」と優しさを発揮してくれているのだから、ぼくは否定はしきらない。というより、これはぼくの見る世界の話であって、終始単純な趣味嗜好の垂れ流しに過ぎないのだ。ので、これを批判とか怒りとか、捻じ曲がった方向には捉えないでいただきたい。

ただ、最後にもう一つ。アムロの立ち絵は、ちょっといただけないかな。