夏原永良:浅知恵、長風呂とセンス・オブ・ワンダー。

SF好き大学生バンドマンの陰湿な頭の中。

ぼくと世界とテクノロジー:戯言

伊藤計劃トリビュート」を読み進めている。「同志少女よ、敵を撃て」は休日に、タランティーノ監督の「レザボア・ドッグス」を見終わった後に手を付けようかと。

伊藤計劃トリビュートは、簡単に言えば、彼から影響を受けた作家さん達が「テクノロジーが人間をどう変えていくのか」というテーマで執筆した短編集であるのだが、最初の二篇で、あまりにも衝撃を受けてしまった。やはり作家さんはとんでもない。

藤井太洋氏の「公正的戦闘規範」は、いわゆるドローンだとか、そんなものが戦場でたっぷりと使われ始めた世界のお話。2015年発売(だったはず)の本書は、2021年現在に見れば、さらに確実な話に思える。テクノロジーによって殺戮をいとも簡単に実行できて、まるでその行為自体を外注するような戦争。Twitterで時折流れるドローン爆弾の映像が、まるでストレスを与えずにリツイートを着実に稼ぐこと自体が、殺人の実感を与えていない証拠だろう。主人公も「わざわざ戦場に立つ必要はない」みたいなことを言っていた。だって、機械が殺してくれるから。この話で、ぼくは命の価値がぐんと下がる未来を見た。いや、もうそれは未来なんかじゃない。ラジコンのコントローラーを動かして、ゲーム感覚で一方的に人を殺す。公正なんてものはない。次のテクノロジーで、今度は誰が死ぬのだろうか。

「仮想の在処」は伏見完氏の短編。こちらは藤井氏の、世界や戦争の行き所を示したようなスケールの大きい話ではなく、もっとパーソナルな視点から見る作品だった。出産時に死亡した双子の姉の脳を解析し、AIで再現してディスプレイ内であたかも「生きている」かの如く振る舞わせ、妹は彼女の世話をする。一見、親の狂気が暴走した結果の、なんとも恐ろしい話だとも思えるのだが、最初から最後までぼくの好みドンピシャだった。姉はAIという特異な性質から人気者になれたけど、妹はまるでおまけのような扱い...。コンプレックスを抱える彼女の視点から見る物語は、辛さを土台にした強さを感じられた。そしてテクノロジーが、本当は彼女に何を植え付け、何を奪っていったのか。何を与えたのか。これは本当におすすめしたいお話。

テクノロジーには光と影をなによりも色濃く生み出す力がある。きっと、伊藤計劃氏に影響された人々は、いつだってそれを心根に持って、未来の想像を繰り返している。

ぼくも少し、そんなことを考えてみたい。というより、考えついたことはたくさんあるから、それを言葉にしてみたい。

残り何篇かは忘れたが、一語一句逃さず読み進める。そしてぼくなりに、何か生み出せないかを思考することにしよう。